高齢になってからのカードローンの利用は、返済途中で亡くなる可能性が無いとは言えず、資産だけでなく負債を残してしまう事になり、相続人が代わって返済しなければならなくなる場合も無いとは言えません。
もしこの負債が大きすぎた場合には、相続人が返済できなくなってしまう可能性も有ります。しかしそういった場合には、相続放棄してしまえば、相続人は負債を背負わなくて済みます。
もちろんこの場合、資産も相続はできませんから、出来ればそういったことにならないように、高齢になってからの借入れについては、事前に相続人に相談しておき、情報を共有しておくことが必要でしょう。
カードローンは以前は概ね65歳までしか利用できませんでしたが、最近では70歳まで利用できるものも増えてきていています。
また寿命も延びて高齢でも活動的な人が増えカードローンを利用する人も増えています。
借入れしたお金というのは負債という事になりますが、これも不動産や預貯金などと同じで資産の一部という事になります。
もしこの負債を負っている人が死亡した場合、他の資産と合わせて相続人が相続する事になり、当然ですが、負債の部分は相続した人が返済義務を負う事になります。
高齢化社会と言われて久しいですが、少子化も影響して定年が後ろに延び活躍の時期が長期化してきています。
このため以前ならすでに引退してそれほどお金もかからなかった年齢になっても、現代ではまだまだお金が必要という人は沢山います。
これに合わせてカードローンなどのキャッシングの申込可能年齢も、以前は65歳までというところが多かったものが、現在では70歳程度まで引き上げているところが増えてきています。
もちろん、年金だけで借りるのはなかなか難しいものがありますが、70歳ぐらいまでは現役で仕事を行っている人も多く、このカードローンを利用する人も年々増えてきています。
高齢になってくると気になってくるのが、相続についてですが、最近では自分が元気ですから、あまり気にしない人も増えてしまっています。
そこでまず相続の対象になる資産について説明しておきましょう。
相続する資産というのは、不動産とか、預貯金などの流動性資産等が頭に浮かびますが、相続の対象になるのは、こういったプラスのものだけではありません。
故人が負っていた負債も、立派な資産として相続の対象になるのです。つまり、ローンでは、契約で死亡したときにどうするのかはっきり決まっていない場合、その返済が残っていれば相続人が引き継ぐ訳です。
以前は定年で引退後は新たな借入れは難しかったので、そう長く負債が残るという事は、あまり有りませんでした。
しかし現在では、説明した通りカードローンなどが利用できますから、こういったマイナスの資産が残っている場合も十分考えられます。
以下説明を分かりやすくするために、資産という場合にはプラスの資産、負債についてはマイナスの資産を指すことにします。
では相続はどの部分を相続するのかという話になりますが、当然ですが、資産だけではなく負債の方も同じように受け継いでいく必要があります。
例えば、評価額1億円の不動産が有ったとしましょう。もちろん相続できれば、それが自分のものになります。しかし、調べてみると2億円の負債が有ったという場合には差し引き1億円の負債を背負います。
このように相続というのは相続人にとって、良い方に作用する場合も有りますが、内容によっては、非常に厳しい状況に追い込まれる可能性も含んでいるので、一概に良し悪しは判断できない訳です。
ですから、相続を考える前にそもそも返済していけるのかどうか、よく考えてみる必要があります。借りたはいいが返済ができなければ、周囲に大きな迷惑をかける事になってしまいます。
ただし、相続人の中には、相続した負債が高額で、自分の返済能力では返済できないということもないとは言えません。こういう場合下手をすると相続したために自己破産しなければならないことも有ります。
しかし、相続人となってはいても、実際に相続をするかしないかは、自分の意志で決めることができます。したがって、もし返済ができそうになければ、相続放棄をすることも可能なのです。
ただし、相続放棄というのは負債だけを放棄するというようなことはできず、放棄する場合には、相続予定の資産全てが相続できなくなりますから、相続放棄をする場合には注意しなければなりません。
このように相続では資産の他に負債も背負う事になる訳です。
もちろん通常は負債が有ったとしても資産に比べれば微々たるものというのが普通ですから、あまり問題にはなりません。
しかし説明したように最近では高齢になってから、借入れすることが増えていて、人によってはびっくりするような金額の負債を残してしまう人も増えてきています。
それでも相続人が返済していける範囲であれば良い訳ですが、中にはとても相続人の返済能力では返済していけないような金額の返済が必要になってしまう可能性も出てきます。
もし相続した資産を処分しても負債の返済ができなければ、相続人は頭を抱えてしまうでしょう。
しかし、法律というのはうまくできているもので、法定相続人であっても、実際に相続するかどうかは、相続人自身が決める事ができるようになっています。
つまり、相続する権利があっても、相続したくなければ相続は放棄することができて、負債が有っても相続放棄してしまえば、負債の返済義務を負う事はありません。
そこで相続するかどうかの判断基準は次のようになるでしょう。
資産と負債の関係 | 相続の判断 |
---|---|
資産 > 負債 | 相続 |
資産 ≦ 負債 | 放棄 |
もちろん資産の方が先祖代々の土地というような場合には、なかなか放棄はできないので、ケースバイケースで考えなければならないでしょう。
相続で注意しなければならないのは、資産と負債を切り離して考える事はできないという事です。
相続人の中には資産の部分だけを相続して負債は相続放棄すれば良いと考える人もたまにいますが、残念ながら、そういった都合の良い相続はできません。
相続するときは負債も含めて相続しなければなりませんし、放棄する場合には、資産の部分も含めて放棄する必要があります。
放棄された資産というのは、他に相続人がいなければ、国家の持ち物という事になり、不動産などは、後々売られることになります。
しかし、問題は死後元金の返済はその持ち家で行う事になるので、相続人が相続することができません。
ですからリバースモーゲージを利用する場合には、そういったことを相続人にも予め説明しておく必要があります。
相続にはこういった問題がありますから、本来であれば高齢になってからのカードローンなどを利用した借入れは回避した方が無難と考える事ができるでしょう。
もしどうしても借入れが必要になったというような時には、実際に借入れしてしまう前に、相続人にも相談して、万一の時どうすれば良いのかについても、詳細に考えておくことが重要になります。
また、ある程度の年齢になったら、いつどのようなことが起こるか分かりませんから、残された相続人が、どのような相続になるのかが分かるように資産状況について情報共有しておくことも必要でしょう。
このように高齢になってからの借入れは相続に大きな影響を及ぼす可能性がある訳です。
長い時間をかけて営々と資産を築き上げてきたのに、安易な借り入れが原因で、その資産を相続させることができなくなるというような事は出来れば避けたいものです。
ですから、借入れが少額で、自分で返済してしまえるというのなら良いですが、そういった見通しをしっかりつけないで安易に借入れしてしまうようなことは回避するべきでしょう。
特に現在では高齢者でも元気ですから、多少高額の借り入れをしたとしても自分なら返済できると高をくくっている人も多いはずです。
しかし、65歳を過ぎたような人の場合、若い人に比べれば、体は確実に弱くなっています。いつ何が有ってもおかしなことではないのです。
元気だったのに急に亡くなってしまったというような人の例は、誰でも周囲に何人かいるはずです。
高齢になった場合、それがいつ自分にも襲い掛かってくるか分からないと考える事が、重要なのです。
ですから、いろいろと遣り繰りしたが、どうしても借入れが必要という場合も、自分だけで判断するのはあまりお勧めできません。
人間というものはどうしても自分に有利にものを考えるものです。この場合であれば、自分で返済できると考える訳です。
しかし説明したように客観的に見れば、高齢者は高齢者であって、自分だけで判断するのは危険です。
その際には返済ができなくなった時にはどうするのかについても、しっかり話し合って決めておくことが重要です。
また借入れするかしないかは関係なく、65歳程度になったら、相続人に対して自分の資産状況を説明して、情報を共有しておくことも必要です。
よく聞く話として、相続する時点になって、相続する資産にどのようなものがあるのか分らず、大変困ったというものがありますが、それではそもそも相続した方が良いのか放棄すべきなのかの判断もできません。
ですから、まだまだ自分が健在で、認知症などが発症する前に、情報を共有して、後々相続人が困らないようにしておくことが必要なのです。
もし大きな負債を抱えているのであれば、相続は放棄するように予め決めておけば、相続人が後で放棄を決断する際に精神的に苦しまなくても済むのです。
もしそういう場合でも、相続人の返済能力をよく考えて、返済がそれ以上になってしまうような借入れはしないように、十分配慮した借入れが必要です。安易な判断で借入れしないように注意してください。
また相続内容によっては相続税も掛かってくる可能性があって、放棄せず安易に相続してしまうと、相続税の支払いものしかかってくる事になってしまうので、その点についても考えておかなければなりません。
もし相続する資産内容からかなり高額の相続になりそうな場合には、事前に税理士にも相談して、できるだけ節税を考える事も、大変重要になります。
このように相続では様々な点を検討しなければなりません。ですから事前に時間をかけてどうするのが自分にとって一番お得になるのか、相続放棄から節税まで、いろいろと考えてみて下さい。
では実際に相続することを考えてみましょう。先程相続の目安として資産が負債を上回っていれば相続すればよいという説明をしましたが、もう一つ考えておかなければならない事があります。
それは相続税です。相続税というのは相続する資産が少なければ、掛ったとしてもそれほど高額になるような税金ではありませんが、相続する金額が増えれば、非常に高額になってしまう可能性も有ります。
もちろん資産だけではなく負債も有れば、その分相続する金額は減る事になって、相続税はその分減りますから、相続した結果、自分にはどの程度の相続税が掛かってくるのかはケースバイケースです。
自分で計算することもできまずが、相続する資産や負債の数が多ければ、そう簡単には計算はできないので実際に相続すべきか放棄すべきかの判断は難しくなります。
そこで、資産や負債が自分では手に負えないと考えた場合には、事前に税理士にも入ってもらって、相談しておくようにしましょう。
税理士であれば、様々な節税対策の方法にも精通している筈ですから、そういった言ことについてもよく話し合って、もし負債があるのであれば、それをどうするのかについても相談に乗ってもらいましょう。
できれば、亡くなるのを待って相談するのではなくて、生前から相続人と税理士を交えて話し合っておけば、死後分からなくなってしまう部分も無い訳ですから、より確実な相続の準備ができるでしょう。
この話し合いの中では相続税だけではなく、様々な面からどうすればお得になるのかという視点で様々な面から検討する事になります。
もしまだ健在であれば、負債をどうするのかという点だけではなく、資産を利用して、それを運用して増やすことも考えられ、その時点では放棄するしかなかったとしても、それを改善することも可能でしょう。
特に相続人が複数いる場合には、後々骨肉の争いといったことが起こらないように周到な準備が必要でしょう。
ここで親のカードローンの借金の相続放棄について纏めておきます。
現在では少子化という事も有って相続人がそもそもいない人も増えていますが、だからと言って野放図に借入れして多額の負債を残すようなことは業者も迷惑ですから止めましょう。